チューニングを終えると、ショルダーバックからコンパクトなアンプを取り出してギターと繋げた。
「いつもカラオケで練習してるの?」
「スタジオ借りるより安いし。あんまりでかい音出せないのが難点だけど」
新しいピックで弦を1本1本弾いて音を確かめると、「よし」と私に向き直る。
「ちょっと聴いててくれない?それで、どう感じたか教えて」
「いいけど・・・、私の感想でいいの?」
「いいよ。素直な気持ちが聞ければいいから」
カズ君が弾き始めたのは「プラチナ」のバッキング、つまり伴奏部分。
今のところ、私がメロディー部を担当しているからカズ君の担当はその土台を支える伴奏部。
また上手くなった、と感じた。
別のコードに移る時の流れが自然で、無駄が無い。いい感じに力が抜けていて、指が柔らかく動いている。
緩急もはっきりしていて、メリハリがあるし、テンポもズレが無い。
「・・・どうだった?」
「すごい。全然無駄が無くて正確。カノンで弾いてくれたら、みんな安心して弾けるんだろうな、って思う」
「・・・比嘉とは?」
「え?比嘉さん?」
「比嘉とは、何が違う?」
馨君に言われたことを言っているんだ、と思った。
カズ君はあれから部活に顔を出さなくなったから、きっと悔しかったんだ。
比嘉さんと何が違うのか、比嘉さんの演奏を想像しながら必死に練習していたんだろうな、と思う。
比嘉さんと違うところは確かにある。
私も比嘉さんのギターに魅了された1人だから。
でも、それを言うには躊躇われる。
カズ君が傷ついたりしないだろうか、と。
「最初に言ったろ?素直な気持ちでいいって。気を使われる方が辛い」
私が迷っていることを見抜いてカズ君は諭した。
「・・・カズ君のギターは正確で、譜面通りだと思う。比嘉さんもそう。でも・・・比嘉さんのギターを聴いた時、鳥肌がたったの。ぐわっ、て体ごと持っていかれて、そこに立ち尽くすしかなくて・・・って、漠然としすぎてるよね。ごめん、こんなことしか言えなくて」
「いや、良くわかった」
言葉足らずでどこまでカズ君に伝わったかわからないけど、カズ君はギターをケースに仕舞った。
「俺も行く。レッド・キャッスルのライブ」
「え・・・?」
「比嘉のギターを自分で感じてみたくなった」

