カズ君が部活に来なくなってしまい、このままやめてしまうんじゃないかと心配していると、馨君が「心配いらないよ」と何もかも知っているかのように言った。
「ギターは毎日持って来てるから、学校帰りスタジオとか行ってるんじゃないかな」
「1人で?」
「自分が必死になってるとこ、見られたくないんじゃない?」
「そっか、良かった・・・」
「やめると思った?」
カズ君を連れ戻したのは私なのに、すぐに信じられなくなった私は薄情だ、と思って頷くことに抵抗があった。
「どうして、馨君はそんなに人の気持ちがわかるの?私もそんな風になりたい」
誰もが馨君のように人の気持ちを察することができれば、誰も傷ついたりはいないのに。
「誰のでもわかるわけじゃないよ。カズは例外。幼馴染に似たような奴がいたからね」
「・・・棗君のこと?」
「そう。歪み合ってるけど、案外似てるんだよ、あの2人。似てるが故に反発するのかもね」
笑窪を作り、「それに・・・」と続けた。
「人の気持ちが全部手に取る様にわかったら面白くないよ」
「どうして・・・?」
「言葉を発することに何の意味も無くなる」
「でも、気持ちがわかれば、その人がかけてほしい言葉をかけてあげられる。悩んだりしなくていいし・・・」
「それが、いいんじゃない。相手のことを考えて考えてやっと出した答えは、どんな言葉でも相手に響くはずだよ」
私を包むような馨君の柔らかい声色。
馨君は簡単に人の心を読み取ることができるんだと思ってた。
でも、そうじゃない。
馨君は真剣に相手と向き合い、その人のことを考えて考えて辿り着く言葉をかけているんだ。
改めて馨君の寛大さに感動してしまう。
「ふたばちゃんならできると思うよ。相手のことを考えられる優しい子だから」
馨君の言葉に励まされ、「ありがとう」と伝えるとこっちが照れて恥ずかしくなるような満面の笑みを浮かべた。

