部室に全員集まり、レッド・キャッスルのライブチケットを貰ったことを伝えると、棗君やカズ君は乗り気じゃなかった。
「あいつらばっかりライブしやがって!俺もやりてぇ!」
「無茶言うなよ。無名の高校生がほいほいライブできる程、世間は優しくないんだよ」
「ますます気に入らねぇ!見せ付けたいだけだろ!悔しがる俺達を見てほくそ笑む気だ!性悪の比嘉が考えそうなことだ!」
最近のカズ君はレッド・キャッスルという言葉や比嘉という言葉に敏感で、一瞬で怒りスイッチがオンになる。
頭に血が昇ると、こうして喚き散らす。
「あたしは行くけど、これ」
「お前、寝返る気かッ!?」
「もぉ・・・うるさい、カズ。違うよ。悔しいけど、レッド・キャッスルってすごい。1回聞いたけど、自分の世界観を作り出すのが上手くて、それに飲み込まれちゃう」
「咲綺の言う通りだよ。バンドとして、レッド・キャッスルは有名なだけある。それを見に行くのも俺達カノンのレベルアップに繋がると思うんだけど」
「他にもっと有名なバンドはあるだろ!?別にレッド・キャッスルじゃなくても!」
「正直に言うけど、カズのギターが比嘉のギターに勝ってるとは思えない」
馨君はあまり見せない冷ややかな目を向け、厳しい言葉をカズ君に浴びせた。
すると、動きが停止したカズ君は喉に言葉を詰まらせた。
「なっ・・・!!」
「何が違うのか自分の目で確認しなよ」
「うるせぇ!比嘉に教わることなんて何もねぇ!」
カズ君は鞄を乱暴に掴んで出て行ってしまった。
私が追いかけようとすると「ほっときな」と咲綺ちゃんに制された。
「言い過ぎたかな、俺」
「そんなことねぇよ。あいつは自分がすごい勢いで弾けるようになったもんだから最近、自惚れてる感が強かった。気付かせるいい機会だ」
馨君が苦笑いしながらカズ君が走り去った方を眺めていると、棗君はいつもの無表情で冷静な分析をした。
「カズには無理にとは言わないけどね。ただ、私とふたばは行くよ。盗める物盗んでやろうと思って。あたしを呼んだこと後悔させてやるわ」
「俺も行くよ。で、棗はどうすんの?」
話を聞いた棗君の眉間に皺が寄ったのを見て、難色を示してることはわかった。
プライドの高い棗君のことだから「行かない」と言うことも考えられたけど、
「行く」
と短く答えたのが私には意外だった。

