先に部室に来ていた咲綺ちゃんは棗君の特等席でA4くらいの紙を真剣な顔つきで眺めていた。
「何見てるの?」
「ん?レッド・キャッスルの新曲だって。前に1度会った時に貰ったの。今度のライブで初披露らしいよ」
「え、それ、くれたの?」
「馬鹿にしてると思わない?あたしがパクらないと信用してるのかな。それともお前にはこんな曲書けないだろうって当て付けかな」
覗き込んで見た譜面は私には理解できない記号が並んでいた。
何かテクニックを必要とする箇所ということだけど、私はまだ習得していない。
知ってる記号もあらゆる場所に散りばめられているけど、出現率が高過ぎるのとテンポが速すぎて私では到底弾けそうにない。
咲綺ちゃんに対する当て付けというより、カノンに対する当て付けのように思う。
お遊びバンドと罵った比嘉さんはただ単にカノンが気に食わなくて馬鹿にしたんじゃない。
カノンとレッド・キャッスルの技術の違いを確信して、それを比喩したんだろうな。
お遊びバンドと呼ばれた原因はきっと私にある。
「まぁ、すごいことは認めるよ。比嘉ってギター以外も一通り弾けるらしいの。中学の時はベースやってたらしいし。その上、作曲までやって、嫌味な奴よ、ほんと」
咲綺ちゃんは譜面を見ながら溜息を吐いた。

