「本当に聞いてほしいだけ。僕達の本気を見に来てよ。カノンのお遊びバンドとは違うってとこ見せてあげる」
「このッ・・・!!」
不敵に笑った比嘉さんと同時に私は反射的に咲綺ちゃんの腕を掴んだ。
案の定、咲綺ちゃんは地面を蹴りだしたけど、なんとか留まらせることができた。
「待ってるよ」
「こら、待て!比嘉ッ!!」
手を振って優雅に去る比嘉さんが早く咲綺ちゃんの視界から消えることを祈りながら、私は咲綺ちゃんの腕を掴んで引き止め続けた。
「ふたば!何で止めるの!?あたし達のやってることをお遊びバンドって言われたんだよ!?」
比嘉さんが視界から消えたことで、怒りの火の粉が私に飛んできた。
「私だって悔しいけど、それを暴力に変えるのって何か違う気がする!音楽で見返さないと意味無いよ」
「っ・・・」
腕にこもっていた力が緩んだので、私も咲綺ちゃんの腕を解放する。
「敵を倒すには、まず敵を知ってからじゃないかな。ほら、私達って結局最後までレッド・キャッスルのバンド見てないし」
握り締めすぎて皺になったチケットを差し出すと、咲綺ちゃんは不承不承受け取った。
除夜の鐘が鳴り響き、年明けを告げる。
毎年のように静かに始まるかと思った1年は突如現れた不敵な笑みの男によって、初っ端から臨戦態勢に入ることとなってしまった。
真っ先に神様に願ったのは、平穏に事が済みますように。

