「棗は感じることねぇの?咲綺に全部飲み込まれそうな感じ。俺、自分アピールに一苦労なんだけど」
「お前が出しゃばろうとするからだろ」
「目立って何が悪い」
「演奏中に目障りになることだけはやめろよ?」
「目障りって何だ!目障りってッ!」
「カズ君!落ち着いて!」
今、棗君が持ってるの私のギターだから乱闘したりしないでー!
仕掛けたのは棗君の方だが、掴みかかろうとするカズ君の腕にしがみ付いて体全体で止めに入る。
今、この場を抑えられるのは自分しかいないし、私のギターを守れるのも私だけだ。
「ッ・・・!?」
カズ君は弾かれるように振り向き、思い切り私の腕を振り払った。
その反動でよろけると、私の腕を引っ張ってそれを阻止してくれた。
「わり」
「ううん。ごめん、ちょっと力入れ過ぎたかな。痛かった?」
「いや・・・、平気」
カズ君の怒りボルテージは下がり切り、安心していると棗君がレスポールを差し出した。
「できたぞ」
だらしなく垂れていた弦はどこにも無く、ピンと張られた6本の弦は錆び一つない新品そのもの。
「うわ・・・、すごい元通り」
「音合わせてねぇから、ちゃんとチューニングしとけ」
「うん、わかった!ありがとう」
レスポールを胸に抱いて、1本弦を弾くとポーンと音が響く。
今度は切れてほしくないな。
棗君にせっかく張ってもらった弦だしな。

