カノン




お昼休みに入って、私は昨日のことを自然な感じで聞いてみることにした。

フライングだけど、先に聞いておいたら何か私なりにフォローができるかもしれないし。


「昨日ね、レッド・キャッスルの比嘉さんに会ったんだよ」


比嘉さんの名前を出すことで様子を窺ってみる。


「何か言われた?」

動じた様子は無く、逆に探られているように感じた。


「咲綺ちゃんをレッド・キャッスルに誘ってるって」

「あいつ・・・みんなには言うなって言ったのに」

舌打ち混じりに聞こえてきた咲綺ちゃんの呟きが私の不安を煽る。


「え・・・もしかして、本当に?」

「本当にって、違うよ!?あたしはカノンを抜ける気なんてないから!」


咲綺ちゃんからその言葉を聞けてやっと安心できた。


やっぱり咲綺ちゃんが抜けるなんて有り得ない。1人でも欠けたら、カノンはカノンてなくなってしまうんだから。


「どうして内緒にしてたの?」


「みんなに相談するまでもないと思ったんだよ。即断ったから。それに、言うと面倒なことになりそうでさ。カズとかキレ出しそうじゃない?」


「うん、もうキレたよ」

「あれ?もう?」

「カズ君も一緒の時だったから」

咲綺ちゃんは苦笑いを浮かべ、次いで溜息を吐いた。


「なら、言わないと逆に怪しいか」

「カズ君が今日訊くって張り切ってたから言っちゃった方がカズ君も気が休まるかと」

「そうね。吊し上げられる前に自白させてもらうわ」



吊し上げられる前に、という言葉通りに全員が集まると咲綺ちゃんはレッドキャッスルに誘われていたことやその意思が無いことを話した。


カズ君は思い出したのか、怒りがぶり返し、咲綺ちゃんに対してそれをぶつけるので喧嘩になりかけた。

ただ、それを止めた馨君も黙って見ていた棗君もそうなんだ、くらいの反応で、不安になっていた自分が馬鹿みたいだな、って思った。