「だぁぁっ!ムカつくムカつくムカつくッ!」
もう悠長に弦など選んでいられる精神状態でも無かったが、それでも辛うじて弦を買うという目的を忘れていなかった私はおすすめの弦を2組購入して足早に店を出た。
「変わってねぇ!あの喋り方!君とか僕とか寒気がするッ!」
先に冷静さを取り戻しつつある私はこのまま電車に乗るのは遠慮し、公園のベンチでカズ君が落ち着くまで待つことにした。
「有り得ないよね?咲綺ちゃんがカノンをやめるなんて」
「絶対無い!」
その言葉が欲しかった。人から「そんなの有り得ない」と一蹴してもらえれば私の馬鹿みたいな不安が消え失せると思ったから。
「何であいつ、黙ってんだ。佐伯さんも聞いてなかったんだろ?」
「うん・・・」
そう。そこだ。
咲綺ちゃんが何故誰にも相談せずに比嘉さんと会っていたのか。
変わらず部活にやって来る咲綺ちゃんはカノンに見切りをつけたようでも無さそうだし。
「明日、吐かせるか」
「言いたくない理由が何かあるかもしれないのに?」
「だからって気になるだろ」
「そうだけど・・・」
咲綺ちゃんが黙ってカノンを抜けるとは思えないけど、話さない理由は気になるところだった。
だから、カズ君を完全には止められず、最終的には明日、咲綺ちゃんに真意を聞いてみる、ということで落ち着いた。

