「お前、婆ちゃんに文化祭のこと教えただろ」

「教えたよ。来てた?」

窓の外には生徒達が徐々に集まってきて、たくさんの影がグランドで揺らめいていた。

「来た。余計なことすんなよ、ボケ」

「見に来てくれたら嬉しいじゃない。お婆さんもすごく見たがってたし」

「小っ恥ずかしいんだよ、そういうの」

頬を人差し指で搔きながら、眉間に皺を寄せていた。


「路上ライブに来てくれた、中学生の子は見た?」

「お前気づかなかったのか?最前列にいたぞ」

「え!?嘘!?全然気がつかなかったー」

一応、顔が見える最前列には視線を配っていたつもりだったけどな、と落ち込んだ。

「まぁ、お前は母親を探すので手一杯だったんだろうけど」

「あ、お母さんと話せたよ」

「上手くいったのか?」

「うーん、私、ほとんど喋れなかったんだけど、帰ったらいろいろ話を聞かせてって言われたから、すごく嬉しかったな」

「そうか」


棗君は、と喉元にまででかかった言葉は打ち上がった花火の音のせいで飲み込んでしまった。


「キレイ、だね」

代わりに出てきた言葉に棗君は小さく頷いた。

様々な色の花が闇を照らし出しては消えて行き、儚すぎる花が散る度に、季節が変わっていくことを実感していった。