「お疲れ様ー」
千尋さんがコンビニ袋をぶら下げて部室にやって来た。
「で、ふたばちゃんにはお客さんだよ」
微笑みながら掌を向けたのは、遠慮がちに顔を出した母と、手を繋いでいる華。
「おか、あさん・・・。見てくれたの?」
廊下に出ると、千尋さんは気を利かせてドアを閉めてくれた。
「見たわ」
感想を聞くのは勇気がいる行為だった。
だけど、母の表情からは嫌々来たようには思えなかった。
「お姉ちゃん、かっこよかったよ!」
華は無邪気にはしゃいでいた。母もそれには「そうね」と微笑んだ。
「ごめんね、ふたば」
思いがけない母の言葉に困惑して、何も言えなかった。
「久しぶりに見たわ。ふたばのあんな楽しそうな顔」
寂しそうに笑いながら、華の頭を撫でた。
「私はいつの間にか、ふたばの自由と一緒に笑顔も奪ってたのかもしれないって思ったわ」
私は震える唇を抑えるのに必死で、小さく首を何度も振った。
「中にいるのがふたばを変えてくれたお友達?」
騒がしいドアの先に視線を向かわせた母の質問に頷いた。
「良いお友達がたくさんできて、良かったわね」
「うん」
初めて、母に自分のやっていることを理解してもらえたような気がした。
「帰ったら、いろいろ話を聞かせてくれる?」
私はほとんど喋ることができなかったけど、涙目のまま大きく頷くと、せき止めきれなかった涙がついに零れ、母もそれにつられて涙を流していた。
華だけは不思議そうに私達を交互に見ては慰めの言葉をかけてくれていた。

