カノン




私にとっての灰色の景色は不本意なピアノ演奏をする私のこと。

「君」は例えるなら咲綺ちゃん、ううん、軽音部全員のこと。

カラフルな光景は正に今。

そして、軽音部に入って過ごした全ての日々。



咲綺ちゃんは歌詞を見た時、「これって棗のこと?」と訊いた。

そこで棗君は即否定したけど、内心私はほっとした。

だって、これが棗君自信の事なら棗君を救った「君」って誰?ってことになる。


『向かってくる風が強くても』


ギターを弾きながら、私は心の中で強く叫ぶ。

これは棗君が作った曲だけど、咲綺ちゃんが唄う曲だけど、私はこの曲に自分の気持ちを乗せたい。





演奏が終わると、拍手が起こり、汗だくになった咲綺ちゃんがマイクをスタンドからはずした。

「ありが・・・」


「もう1曲お付き合いください!今日から新入部員が入ることになったので、演奏と共に登場してもらいたいと思います」


「はぁ!?」

いつから持っていたのか、馨君はマイクを手にし、咲綺ちゃんの言葉をぶった切った。

棗君は舞台にいるのも忘れ、素の状態で顔を歪め、咲綺ちゃんは目を丸めて馨君を振り返る。

「覚えてるよね?部活紹介の曲なんだから」

「え!?やるの!?今!?」

「つーか、誰だよ!新入部員って!聞いてねぇぞ!」

「みんな演技が上手いねー。引き立てありがとう。じゃあ、行こうか」

有無を言わさず馨君がスティックを叩く。


咲綺ちゃんは慌てて、マイクに向き直り、棗君は馨君を睨みながらもやらざる負えない雰囲気に乗せられた。


曲が始まると、ギターの音が2つに分かれる。


棗君は視線を外せる限り、周りを見回すことに使った。


奏でる2つのギターのうち、メロディーを演奏するのは私。

そして、サイドギターはもちろん―――