時間になると照明が落とされ、自然と声の数が減った。
音楽と共に舞台の背に置かれたスクリーンに文字が踊りながら「第○回、松陽高校文化祭」の文字を完成させる。
舞台の真ん中にスポットライトが当たり、2人の男女が姿を現すと、彼らが司会進行を始めた。
「最初は軽音部のバンド演奏です。カノンの皆さん、お願いしまーす!」
再度舞台が暗くなったので、私達は壇上に上がる。
裏方の人がスクリーンを映し出す為に端に避けておいたドラムセットを真ん中に移動させ、それぞれ音を鳴らしてみる。
まずは「プラチナ」からだ。
暗闇だからスタートの合図は馨君がスティックを3回叩いたら。
叩き終わるとシンバルの音がシャーン、と甲高く体育館に響き、舞台がライトアップされた。
いつもそうだけど、演奏が始まると緊張なんて忘れてしまう。
ただ、ここにいることが楽しくて、心地良くて、弾んだ気持ちが白いレスポールを掻き鳴らす。
ただ聞いていた観客が咲綺ちゃんの声に感化され、呼ばれて手拍子を始める。
来た。
この一体感がたまらないの。
「プラチナ」を終え、一息ついて「ケープ・オブ・グットホープ」。
そのすきにさっと観客席を見回したけど目の前に座っている生徒達しか顔を判別することができなくて、母が来ているかまではわからなかった。
ちらりと私の反対側の端に立つ棗君を窺うと、棗君もこっちを向いていて、視線がかち合って棗君が小さく頷いたのがわかった。
私のタイミングで入っていい、と咲綺ちゃんに言われたから深呼吸を2度してから曲に入る。
リズムパターンは16ビートのスタートだから手首のスナップが大事。これだけで飛び跳ねるような音調になる。そして、ビブラート。
その後、食い気味にベースとドラムが入ってくる。
観客席が暗くて母がこの演奏を見ているかなんてわからない。
だけど、私はただ伝えるだけ。
いるかもしれない母に私の気持ちを音に乗せて。
見て、見て。
私がこんなに、ワクワクして笑ったりできるのはこのバンドのおかげなの。
『一歩踏み出せば、すぐそこにカラフルな光景』
サビから始まり、アップテンポで駆け抜ける。
そしてAメロに突入すると、急ブレーキのようにリズムがスローになる。
『彷徨い歩く道は色を失ったまま』
『灰色にしか見えない景色は脳を麻痺させた』
歌詞を見た時、私の気持ちが映し出されているかのようで目を見張った。
「ケープ・オブ・グットホープ」は人生を諦めかけた人が曲中に出てくる「君」に手を貸り、希望をという光を見つけた、という内容。

