カノン




その3日後に棗君は作った詩を咲綺ちゃんに渡して4人で初めて合わせることができた。

棗君の曲は「ケープ・オブ・グットホープ」と名付けられた。

日本語にすると希望岬となるらしい。

曲調と詩も、詩と咲綺ちゃんの感じもピッタリで感情移入が容易にできるから音の強弱も付け易い。


「ねぇ、これ棗自身のことなの?」

「まさか」

「そうだよねー」

唄い終えると、詩を見ながら咲綺ちゃんは訊ね、それを即否定した。


「な、棗君。これ、私のソロパートからで本当にいいの!?」

「お前、耳コピできるんだろ。俺のギターずっと聴いてたんならできなくはねぇだろ?」

「実際できてたよ、ふたば」

「こんな大役・・・」


今までは必ず誰かの音と混じっていたから安心できたし、フォローもしてもらえた。

でも、今度は私がミスをしたら出鼻を挫かれて曲自体が台無しになる。


棗君が私にソロを与えてくれたのは嬉しいけど、それ以上に不安が大きい。


「棗はふたばちゃんにどうしてもやってほしいんだよ。ふたばちゃんの成長を1番わかってるのは棗なんだから」

「お前はいちいち余計なことをっ!」

「棗が素直じゃないから俺が代弁してやってるんじゃないか。寧ろ感謝してほしいくらいだな」

成長を1番わかってるのは棗君―――

馨君の言葉に嬉しくなって口元が緩んでしまう。

それを見逃さなかった棗君はすかさず口を挟む。


「調子に乗るな!前よりマシになってもまだ下手くそなんだからな!?ソロこけたらただじゃおかねぇ!」

「死ぬ気で練習します!」

「当然だっ」

馨君はやれやれ、と溜息をついて「そんなに気負わないでね」と優しい言葉をかけてくれた。