中学生の女の子と別れ、私は棗君を見上げて再度確認した。

「あの曲の続き、書いてくれるってこと!?」

「・・・口が滑った」

舌打ちして、眉根を寄せたがすぐに元に戻り、口元がピクピク動いている。

「素直に喜んだらいいのに」

「うるせぇな」

照れ隠しで怒った棗君は怖くなく、寧ろ微笑ましくて笑ってしまうと今度は「笑うな」と一喝された。


「そうだ。私にTAB譜くれる?早めから練習しておきたいの」

「まだ文化祭でやれるかわかんねぇだろ。馨と咲綺が頷くとは限らない」

「頷くよ、きっと」

「根拠のねぇことをお前は・・・」

「だってあんな人だかりから1人の女の子を勇気づかせる曲だよ?」

「逆に言えば1人しか、だけどな」

「もう、あまのじゃくなんだから」

「お前に励まされる謂れはねぇ」


励まされた自覚はあるんだ、と内心ほくそ笑むと見透かされたように、棗君に睨まれた。


「お前、また泣いたろ」

「え!?知ってたの!?」

「隣でダラダラ流されて気づかないわけがねぇだろ」

棗君は私の頭を上から掴んで揺さぶった。

「痛い痛い!何、どうしたの!?」

「全員が納得する曲作ってくるから待ってろ」

素直じゃない棗君のお礼、と思ってこの頭の痛みは受け取っておこう。