ギターの弦をいじっていた手を止め、顔を上げて視線が向けられる。
切れ長の一重瞼は鋭い印象で睨まれているような気になる。
無表情の顔からは何も読み取れないのに、向こうは全てを見抜いているように思えて、私は視線を外した。
「女?」
「言ってなかったっけ?同じクラスの佐伯ふたばちゃん。ギターの経験あり」
棗君は興味のなさそうな顔で上から下まで品定めするように視線を動かした。
「こいつは櫻井棗」
「よ、よろしくお願いします」
小さく頭を下げたが、棗君はふい、と視線を逸らしてさらりと無視された。
嫌な感じだ。
「じゃあ、ちょっと弾いてみろよ」
「え!?」
突然の提案と横柄な態度に私は慌てて首を振る。
「そんな、即興で弾けるほど上手くないし、中学生の時にちょこっとやっただけだし!」
「別にいい。すごいの期待してるわけじゃねぇ。女のギタリストなんてたかが知れてる。ギターならカズが置いていったやつ、とりあえず借りれば」
壁に立てかけられていた赤いギターを指差した。
でも、私はその指先を視線で追うことはしなかった。
射抜くような目をした棗君に気圧されながらも私は棗君から視線を外さなかった。
咲綺ちゃんのようにこの強く握った拳を棗君に向けて振り回したかった。
私はギターの方へ向かわず、大股で棗君の真正面に立った。
「確かに名ギタリストって呼ばれる人には男の人が多いけど、女の人だってオリアンティとかジェニファー・バトゥンとかすごいギタリストはいっぱいいるんだから!」
私が感動したギタリストを全て馬鹿にされた。
落ち込むたびに、私はこの人達に救われてきたのに。
我に帰った私は棗君の鋭角眉の間に皺が寄っていることに気づき、額に汗が滲んでいくのを感じた。
悟られないようにじりじりと後退を試みる。

