校舎の裏まで来ると掴まれていた腕を放り投げられて、体がよろめいた。
「どういつもりだ、お前はッ!この曲、どうやって作った!?」
すごい剣幕に圧倒され、唇を噛みしめ、涙を抑えるのがやっとだ。
「棗君が弾いてるの毎日聞いてたから覚えてて、それを譜面に落とし込んだの」
「覚えてって・・・」
一瞬怒りが消え、目を丸めて驚いているようだったがすぐに鬼の形相に戻る。
「俺がこれ作るの辞めたの知ってるよな!?何だこれは、嫌がらせか!?」
「ち、違うよ!そんなつもりでやったんじゃない!」
「じゃあ、どういうつもりだ!」
譜面をコピーした理由を言うか言わないか迷った。
言えばまた怒鳴られる気がしたが、黙っていても怒鳴られるような気がして渋々口を開いた。
「棗君、鞄の中にこの曲の譜面ずっと入れてるでしょ?」
「お前っ・・・!鞄の中見たのか!?」
「ご、ごめんっ!いけないことだとは思ったけど1ページ分の譜面が出てきてて、それを見ちゃったの。それ以外は見てない!漁ったりとかもしてない!」
「くそっ・・・」
眉根を寄せて頭をガシガシ掻いて視線を逸らした。
「棗君、譜面は全部捨てたって言ってたけど大事に持ってるってことはこの曲を作るの辞めたこと後悔してるんじゃない?」
「後悔してねぇよ」
「嘘。絶対嘘!どうして嘘つくの?せめて理由を教えてよ」
自分を偽ることがどんなに辛いか私は身に染みて知っている。
今の棗君が偽っている姿だと知ってしまった以上、棗君の苦しさがわかってしまうから、私も辛くなる。
「お前、馨の言葉聞いてなかったのか?」
「馨君の言葉・・・?」
良くできてるって褒めてたはず・・・。
「咲綺並みじゃないけど、って言っただろ?」
棗君の顔が苦笑いに変わる。それを見て、私の胸は締め付けられ、一瞬息ができなくなってしまった。
「それが辞めた理由。咲綺が『プラチナ』作ってきた時に負けたって普通に思った。こいつに敵うはずねぇって瞬間に思ったんだよ」
「そんな・・・」
咄嗟に言葉が出てこなかった。
誰よりも努力をしているのにそれを隠して偉そうに座って、怒り以外の感情をほとんど出さない棗君がこんなにも悲しそうな顔で、心折られている。
そんな棗君に慰めの言葉を言えばいいのか、励ましの言葉を言えばいいのか、わからなくて、口を開いたまま棗君の顔を見上げていた。

