その1週間後に棗君が作っていた未完成の曲を完成させることができた。
できたものをギターで弾いてみたものの、私の技術が至らないせいで、記憶とは少し違っているようにも思えたが、ピアノの音に変換すれば、ほぼ完ぺきな復元ができたと思う。
「これ、見てもらえる?」
棗君に見られたらすぐにバレて抹消されてしまいそうなので、棗君が1人で練習している時に馨君にこっそり差し出した。
「ふたばちゃんが作ったの?」
その質問には頷かないと変かな、と躊躇っていると、躊躇っているうちに馨君が譜面に熱中し始めたので安心した。
これを見て馨君がいいね、と言えば棗君も作らざるを得なくなるんじゃないかと思った。
できるだけ、馨君の前に立って、何をしているのか棗君が座っている場所からは見えないように心掛けた。
「なーに、してんの?」
タイミング悪くやってきてしまった咲綺ちゃんはいつものように明るく登場し、馨君の肩から顔を覗かせた。
棗君の方を窺うと、棗君は顔を上げて視線をこちらに向けている。
「何ー?誰の曲?」
や、やばい。
咲綺ちゃんが発した声がこんな何もない教室で届かないはずが無い。
棗君が立ち上がって歩いて来るのを背中に感じながら、どうにかバレませんように、とこの期に及んでも祈っていた。
私の後ろから、馨君が持っている譜面を見ろしているのが譜面に落ちている影でわかる。
「・・・お前な・・・」
低く唸るような声は私に言った言葉だとすぐにわかり、身を固くした。
まだ馨君が見終えてない楽譜を棗君は乱暴に奪っていった。
「何、棗!?」
「却下!」
「何でだよ。初めてなのに良くできてるよ、これ。咲綺並みにとは言わないけど、リズムはいいし映えそうだ」
「うるせぇ、却下っつったら却下だ!あと、お前こっち来い!」
棗君は目を吊り上らせて、私の腕を引っ張った。
バレたら怒られることは予想済みだったけど、思った以上に怒っているかもしれない。
捕まれる腕にも強い力が籠っていて痛いくらいだ。

