今日はいつもと違う。
青々とした空に浮かぶ雲の形も、頭上を鳴きながら飛んでいく鳥達も、すれ違う別の学校の生徒も、何もかも初めて見る光景。
特別な日に思えてしまうのは見慣れない道筋で学校に向かっているから、というだけではない気がする。
当たり前だけど、初めて棗君と一緒に登校している。
隣を歩く棗君は欠伸を噛み締めて、太陽の激しさに苛立っている。
それを、気づかれないようにちらり、と盗み見てすぐに視線を逸らす。
スリル感を味わいながらも短い登校時間を私なりに楽しんでいた。
いつもより早い時間に外を歩いているからか、空気も澄んでいて気持ちがいいなー、なんて思いながら、またちらり。
その気持ち良さは、いつものように朝練習をして、授業が始まった瞬間から悪さを始めて、つい、うとうとーーー
「佐伯っ!!」
気づいたら腰に手を当てた先生が横に立っていて、私はここで自分が寝ていたことに気付いた。
ついでにヨダレまでしっかり垂らして。
初犯ということもあり、謝ってすんなり許してもらえたが、その後も睡魔と闘う時間が続き、昼休みのチャイムが鳴って胸を撫でおろした。
「珍しいじゃん。ふたばが居眠りなんて。何回か起こしたけど全然反応なかったよ」
「ちょっと昨日、寝れなくて・・・」
「そうなの?何で?」
家出の経緯も棗君の部屋に泊めてもらったことも全て話した。
ただ、棗君ののことを好きだと悟られないように言葉は選んだつもりだ。
隠し事をするのはいい気はしないけど、片思い決定の言わば最初から失恋した一生実らない恋。
そんな虚しい恋を自ら話すには気が重い。
彼をよく知っている咲綺ちゃんだから尚更気恥ずかしい。
「思い切ったことするねー。昨日の着信もそのこと?」
「ごめんね、寝てるのに」
「それは平気。あたし、ちょっとやそっとじゃ起きないし。でも、ちゃんと話せたんだ?」
「私が話したいことは話した」
それを、わかってはもらえなかったけど。
「だから、話したことに後悔はないかな」
「それなら、よろしい」
咲綺ちゃんは満足げに頷いて、慰める様に、私の頭を撫でた。

