カノン




コンビニで歯ブラシセットや下着なんかを適当にカゴに放り込んで急いで会計を済ませた。

その間、棗君はずっと音楽系の雑誌を立ち読みしていて、私が声をかけるとその雑誌を会計に出していた。

新しい号だったのか、気に入った雑誌だったのか、とにかく棗君は若干頬を緩ませているように見えて、私もつられて頬が緩んだ。


棗君のアパートに戻って来ると、棗君のお婆さんがお風呂を進めてくれた。

何度も遠慮したけど、最終的にはお婆さんの押切により恐縮しながらお風呂を使わせてもらった。

早々にお風呂を済ませると、バスタオルやハンドタオルが大きさ順に重ねて洗濯機の上に置かれていた。


「すみませんでした・・・」

お婆さんに言ったつもりだったが、リビングにはソファに座る棗君しかいなくて、どきりとした。

「寝た」

ソファの後ろにある部屋に視線を向け、短く返答した。

「いろいろと、ありがとうございました」

「別に。早く寝ろよ」

「棗君はそこで寝るの?」

「誰かさんが俺のベットを占領したからな」

「・・・わ、私、ソファで寝るから、棗君は自室へ・・・っ!!」

お婆さんに促されたからって家主を差し置いて何をおこがましく、棗君の部屋で眠ろうとしていたんだろう。

冷たい視線に怖気づいて慌てふためいていると、棗君が面倒臭そうに私を眺めていた。

「厚かましさで言ったら最早今更だろ」

「あ、あつかま・・・、そう、だよね」

「あー、くそっ」

苛立ちながら頭を激しく掻いて、眉間に皺を寄せている。

それを見て、びくっとすると棗君は更に苛立ったように舌打ちをした。


「悪かった」


「え・・・」

「何だよ」

「今、謝った・・・の?」

「は?」

「棗君が?」


「・・・おい、いい度胸してるじゃねぇか」

一瞬にして棗君の目の色が変わり、大股で歩いて来て私の前に立つと、私の頬をつねりあげた。

「い、痛ッ!!いたたたたっ!」

「お前はいちいちマジに考えすぎなんだよ!!めんどくせぇな!それで言い過ぎたかと思ったら何だ?その態度。おちょくるのもいい加減にしとけよ、こら」

「ごめんなさいすみません!もう馬鹿なことはいいません!」

謝ってからも数秒つねられて、やっと棗君の気が済んだ頃にはしっかりと頬に熱を持っていてピリピリと痛んだ。