「私、平気だよ。ネットカフェに行ってみるから」
「ほんっと危機感ねぇな、お前」
「24時間営業なんでしょ?シャワーもあるみたいだし。個室制らしいし。そんなに危険なとこかな?」
「ネットカフェにも行ったことねぇのか。天然記念物だな」
仕方ないじゃないか。
ろくに遊びに出たこともないのに、あちこち店に入って遊べるわけがない。
みんなの常識をテレビで知ることが私は多い。
驚くこともあれば感心することもあったが、いくらかお金を払えば漫画もインターネットも読みたい放題、使いたい放題というのは画期的施設だと思う。
「もう少ししたらバイト終わるから、そこの店で待ってろ」
道路の反対側にあるファストフード店を顎で示した。
「安全なネットカフェでも連れてってくれるの?」
「違ぇよ、ボケ。個室っつったって上から丸見えなんだよ、ネットカフェっつーのは。そもそも安全も不安全もあるか。仕方ねぇから俺んちに今日は泊めてやる」
「えぇぇぇぇ!?」
「うるせぇな、何だよ」
「いや、だって、棗君の家って、ねぇ?」
「だから何」
何、と言われても・・・。
両親がでてきたら、挨拶はどうしたらいいものか。
あ、でも、こんな夜中にお邪魔したら常識のない子だと思われないかな。
それに、千尋さんのことを知っていたら息子が他の女を連れて来た、と勘違いしないかな。
そもそも、好きな人の家なんかに泊まったら休まることがないような気がする。
「いいからあっちで待ってろ。仕事の邪魔すんな」
また犬のようにあしらわれ、私はぐるぐるといろんなことを考え、パンクしてしまいそうな頭を支えながら道路を渡ろうとする。
そしたら、腕を引っ張られて後ろに引き戻された。
その瞬間、車が目の前を通過して青褪めた。
「お前っ!マジでいい加減にしろよ!」
案の定、棗君に怒鳴られた。
棗君は私が店に入るまで睨んでいたから、できるだけしゃきしゃきと歩いてみせた。
店でポテトとシェイクを頼んで少し落ち着いた。
思い返すと棗君は私を泊めることに表情一つ変えなかったな、と虚しくなった。
棗君は私のことを何とも思ってないことを痛感して溜息が出る。

