「コラ、咲綺!サボってないでコートに入ってよ!次、咲綺だよ!」
いつの間にか一試合終わっていたバレーは、組を変えて出る女子達がネットを挟んで立っている。
「ちょっと、待ってて!!」
コートから呼んでいた女子を制し、「ねぇ」と私に向き直る。
「バレーボール、やってみたくない?」
「え・・・」
「やったこと無いんでしょ?」
咲綺ちゃんは立ち上がって、私の顔の前に手を差し伸べた。
「うん」
その手を取ると、咲綺ちゃんが引っ張り私を立たせてコートに向かって走り出す。
「はーい、誰かふたばと選手交代してー!」
困惑した女子達が顔を見合わせているのがわかった。
「あ、私と代わって。連戦でキツイと思ってたの」
戸惑っている女子達を他所に、一人の女子が手を挙げた。
「あ、ありがとう」
その子にお礼を言うと、愛想の良い笑顔が返ってきた。
「おいおい、何勝手なことしてるんだ。佐伯は見学だって言っただろ」
試合を始めようとしていると、先生が止めに入って来た。
「もうそのルール、無くなりました。これからは佐伯さんもバレーをやります」
先生の前に咲綺ちゃんが立ちはだかると、先生も困ったような顔をする。
「大丈夫です。あとで、このことについては母にもきちんと話しますから」
毅然として先生に伝えると、先生は「まぁ、それなら・・・」とコートの外に出て笛を吹く準備をした。
「ルールはわかる?」
「ずっと見て来たから、大丈夫」
咲綺ちゃんは満足そうにボールを私に手渡した。
そのボールを軽く宙に浮かせ、腕の内側でその下を強く押し上げると、ボールは放物線を描いて飛んで行った。

