もう一曲のコピー曲を演奏し終えると、もう汗だく。
拍手喝さいの中、舞台を下りると咲綺ちゃんがニコッと笑って拳を突き出してきた。
私も拳を作って咲綺の拳に合わせた。
まだドキドキしている。緊張の鼓動じゃなくて、興奮の鼓動。
緊張していたことなんて忘れていた。
馨君とも拳を合わせた後、棗君にも向けると目を逸らしたので、無視か?と思ったらそのまま拳をゴツンと合わせた。
「ライブって最っ高!」
2曲目では咲綺ちゃんが呼ばなくても観客が体を揺らし、ノッてきてくれたし、名前での声援もちらほら。
観客も知っている曲だからか、前列で口ずさんでいる人もいたみたい。
興奮冷め止まぬまま、控室に楽器を置いて観客席の隅で他のバンドを鑑賞することにした。
ちょうど、次のバンドが1曲目を終えた頃で拍手を浴びていた。
今まで演奏したバンドの楽器の編成はそれぞれ違い、ジャンルも違う。
一口にロックって言っても様々な表現方法があるから例え、同じ歌を唄ったとしてもジャンルが違えば、唄う人が違えば別の曲かのようになるはず。
そういう型に納まらない自由な感覚が好きで私はロックに魅入られた。
いよいよ最後のバンド。まだ舞台にも上がっていないのに観客がざわつき始め、落ち着きがない。
メンバーの1人が見えると拍手と歓声と黄色い声。
名前を呼んだり、短い悲鳴みたいな声も聞こえてくる。
存在だけで観客が一体化した。
編成は5人でギター2、ドラム、ベース、キーボード。
ギターの1人がボーカルも担当するらしく、マイクの前に立った。
照明が暗くなると、ボーカルにだけスポットライトが当たる演出。
ざわついていた観客が一瞬にして黙り、ボーカルの小柄な彼だけを見つめていた。

