咲綺ちゃんのオリジナル曲、「プラチナ」を唄い終えると指笛が混じる拍手が沸き起こった。
誰だこいつらって思っていたはずの観客が純粋に拍手を送ってくれている。
多分、ほとんどの観客が鳳を務める今回のライブの主役とも言えるインディーズバンド、レッド・キャッスルがお目当てなんだろう。
それでも、私達の演奏に少しでも心を動かしてくれたから飛び跳ねていた観客がいて、拍手を送ってくれる観客がいる。
演奏前の刺さる視線が嘘のように、暖かく受け入れてもらっている気がした。
「こんばんはー!カノンでーすっ!」
咲綺ちゃんはめいっぱいテンションを上げて声を張り上げた。
再び拍手が起こっている間に肩で息をしていた咲綺ちゃんは呼吸を整える。
「あたし達、カノンは今日がライブハウスデビューなのでメンバーの紹介をします!まずはドラムの馨!」
ペダルを踏んでバスドラム、スティックでタムの連打、最後にシンバルをシャーンと鳴らして笑顔で礼をすると、「かっこよくない!?」「馨くーん」とその容姿で女子の心を一瞬で物にした。
さすが、学園のアイドル。
「ベース担当、棗!」
棗君も両手を忙しなく動かし、低い音で応えて小さくお辞儀。
にこりともしないけど、私にはちゃんと聞こえた。
女子が小さい声でキャッキャッとしていたのを。
棗君って目つきが鋭くて近寄りがたいから、馨君ほど公にはなってないけど、校内にも隠れファンがいることを私は知っている。
「ギターのふたば!」
私も用意してきたワンフレーズを鳴らす。
絶対にミスんなよ、って棗君に釘を刺されたから曲と同じくらい何度も練習した、ワンフレーズだけの速弾き。
練習の時、指が何度もつりそうになったけど、ふぅー、なんとか成功。安心してお辞儀をすると無難に拍手。
棗君や馨君のようにはそりゃあ、いかないよね。
「そして、あたし。ボーカルの咲綺です!」
1番拍手が大きかったと思う。男も女も咲綺ちゃんの声に魅了されたに違いない。
申し分ないルックスと誰もが聴き入る歌声。
体全体から出てくるプラスオーラみたいな、近くにいるだけでその場を明るく楽しい気持ちにさせる、そんな雰囲気を持っている咲綺ちゃんは一瞬にしてここにいる客を自分の客にしてしまった。

