いつものセーラー服を身にまとい、咲綺ちゃんを先頭に馨君、棗君、そして私と舞台に上がる。
ライブハウスは小さな青いスポットライトがいくつか舞台を照らすだけで客席は前列くらいしか見えなくて、ほとんど何も見えない状態。
リハーサルの時にこんな感じになります、って言われてスピーカーチェックってことで音出しくらいはやったけど、その時と同じ舞台上とは思えない緊張感。
見えなくても全ての視線が私達に注がれているのを感じる。
ライブハウスの人口密度が高いことは熱のこもり具合と口数の多さでわかる。
既に2組みのバンドが演奏を終えているせいか、熱気が酷くて、立っているだけでも汗の玉が浮き出てくる。
そんな中、リハーサル通り自分の定位置につき、馨君はスティック、私と棗君はそれぞれの愛器を繋いだストラップを肩にかけた。
咲綺ちゃんがマイクを両手で包みこんで、さあ、準備万端だ。
心臓が早鐘を打っている。
ヤバイ。
不安と緊張で潰れそうになりながらも、どこかでワクワクとした弾む気持ちが見え隠れする。
複数の感情が入り乱れる中、馨君がシンバルを思い切り叩いて演奏がスタートした。
その瞬間、パッと赤やピンクや緑に色を変えるスポットライトが、それぞれ自由に点灯したり消えたりを繰り返す。
レスポールの白いボディはスポットライトを浴びて色を変える。
ライブハウスに太く甘いレスポールの音色が響いた。
私がピックを滑らすたびにスピーカーから奏でられる私の音。
ギター、ベース、ドラムの3種が前奏を奏でれば、次は咲綺ちゃんの出番だ。
『覚えてる?私達の夢が始まった、あの記憶』
咲綺ちゃんが作った「プラチナ」は私が軽音部に入る前に3人でバンドをやろうと決めた日のことから歌が始まる。
『抱えきれない夢のような夢だね、って笑って照れ臭さを誤魔化した』
夢って何?って聞いたらカノンでデビューすることだって当たり前のように咲綺ちゃんに言われた。
私が入ってまた夢に一歩近づいたんだ、って言ってくれた。
私はギターを弾くことを一生続けるなんて考えてもいなかったから、その時胸がチクリと痛んだ。
プラチナは希少価値のある金属で、何物にも溶けないんだって、と咲綺ちゃんが言った。
私達の持っている夢も叶えられるのは一握りの人だけど、絶対に消えたりしないんだって信じたい、と。
それがプラチナというタイトルの理由。
聞いていた棗君が王水には溶けるけどな、と表情一つ変えないで水を差したけど、咲綺ちゃんは聞こえないふりをしていた。
「プラチナ」には咲綺ちゃんの強い想いがつまっているから、今日の咲綺ちゃんは一層力強く、私まで圧倒される。

