カノン




「高校生だけのイベントを思いついたのってもしかしてこいつら出すためか?」

「あらぁ・・・」

「あらぁ、じゃねぇよ。俺らはこいつらの引き立て役かよ」

「んもう、そんな怒らないでよね。この子達、卒業したらデビューするんじゃないかって言われてて、それに拍車をかけようって魂胆もあったわよ。でも、そういうことって普通でしょう?有名どころを最後まで引っ張って客引きするのって。じゃないと無名バンドなんていつまでたっても売れないわよ」

いまいちライブハウス事情っていうのはわからないけど意図は理解した。

私達みたいな初めてライブハウスに出演するバンドが出ますよって広告出したところで誰も来ないし誰も聴いてくれないからこういう手法を使うらしい。


「集まってくるのはレッド・キャッスルのファンばっかりであたし達にとってアウェーなわけだ」

何故か口元に笑みを浮かべている咲綺ちゃんは拳と掌を合わせて「よっしゃ」と意気込んだ。

「レッド・キャッスルの客争奪戦ね」

「なんだか物騒ね。でも確かにレッド・キャッスルを見に来たお客さんをあなた達があっと言わせる演奏ができればあなた達のファンになってくれるはず。そうやってファンを増やしていくのよ。レッド・キャッスルだって最初はそうやって地道にやってきたんだから」

「あたし、すごいわくわくしてきた!」

咲綺ちゃんの瞳の奥に燃え盛る炎が見えた。

棗君も静かに闘志を燃やしているだろうし、馨君は穏やかに笑っているけどアウェーの状況下で演奏することを微塵も恐れていない。


「つまりは、ライブ会場を支配しちまえばいいんだろ?」

ほらやっぱり。

棗君は演奏している時のような不敵な笑みを口元に浮かべた。



軽音部ってそう。

不利な状況の方が燃えるし、むしろ楽しんでるみたい。

ライブハウス初出演だけでも私は緊張しっぱなしなのに、客争奪戦という戦いまで参戦しなくちゃならないなんて、私にはちょっと荷が重いかも。

そんな私の気持ちを他所に3人は意気揚々と自分達の家へ帰って行った。