カノン




カノンのライブハウスデビューを明日に控えた軽音部の今日の活動場所はレンタルスタジオ。

審査の時にやったコピー曲と咲綺ちゃんが作詞作曲した「プラチナ」の2曲を通して演奏し、最終チェックを行った。

棗君に言わせたらまだまだ、なんだけどなんとかカッティングができるようになって、曲の中でもそれらしい雰囲気で混ぜることができた。

本当はブリッジミュートとカッティング以外にも曲に入れたかったテクニックはあったみたいだけど、間に合わなくて断念。

棗君が私仕様にアレンジしてくれた。

今日は早めに切り上げようってことで、ギターケースを背負ってスタジオを出るとロビーで千尋さんが椅子に座っていた。

「お疲れ!」

手を挙げて、明るく挨拶するも、誰も反応できずにその場で立ち止まった。

「何?姉さん」

「ライブハウスで準備してたのよ。演奏順、今日はスタジオでやるって言ってたから早く教えてあげようと思って」

緑色の紙を馨君に手渡すと、私達は顔を寄せ合ってそれを見下ろした。

明日のプログラム、バンド6組のうち、カノンは3番目の出演だ。


「審査の時、レッド・キャッスルなんていたっけ?」

咲綺ちゃんがプログラムを示して首を傾げた。

審査の時は自分のことでいっぱいいっぱいだったから、レッド・キャッスルっていうバンドがいなかったかさえわからない。


「レッド・キャッスルって?」

「この辺じゃ有名だよ。全員高校生なんだけどライブハウスにしょっちゅう出てくるし、ファンも既についてるって話」

「ああ、その子達はこっちからお願いしたのよ」

「何それ、審査なし!?」

当たり前かのように千尋さんが言うと、咲綺ちゃんは持っていたプログラムの紙の端を握りしめた。

「客寄せなわけね」

馨君が咲綺ちゃんの手からプログラムを救い出そうとしている。

「そういうこと。不公平って思うかもしれないけど、仕方ないのよ。彼らを呼べば自然と客は集まってくる。無名のバンドばかりじゃ、なかなか、ね」