「……ちょーさみー!」
「もう2月だもん……。」
私はいま今野の自転車の後ろに乗っている。
震えながら一生懸命自転車をこぐ今野を後ろから思いっきり抱きしめた。
「っおい!!」
一瞬自転車がふらふらとする。
私は大きい口で笑った。
今日はバレンタインデー。
手作りケーキをあげたお礼に家まで送ってくれている。
家の近くの空き地に着くと、今野は一旦自転車を止めた。
私はとりあえず自転車から降り、今野は自転車を固定させる。
空き地には霜がおりていた。
霜を踏みしだく音が気持ちよく、私は空き地を歩いた。
途中、今野に手をとられ、キスをする。
今野とキスをすると、いつも泣きそうになる。
これが嘘でも夢でもないことが、奇跡みたいで、幸せでたまらない。
キスを終えて、今野から離れると、二人の白い息で前さえ見えなくなって、やっぱり夢みたいだと思ってしまう。
きっといつまでも覚めない夢のような私の現実。
end



