「……昨日……」
私はキュッと目をつむった。
「川瀬と別れた。」
「え…………」
「社会準備室のは川瀬から無理やり抱きついてきただけだよ。
『梨紗』って呼んでたのも川瀬に言われたから。
あいつには借りがあるんだ。」
「…………」
「…………お前にフラれたあの日、川瀬が差しのべた手を俺は振り払えなかった。
俺はお前が思っているよりもずっと弱い。」
「…………川瀬と付き合ってから笑うことが多くなった。」
私の目から涙がこぼれる。
今野が私に近づく。
「お前を失う心配をしなくなったから。」
「…………でも……」
今野が私を抱きしめ、私も今野の腕に身を任せる。
「…………泣くことも多くなった。」
「…………俺が泣くのはいつだって、お前のせいだ……。」
「………っ…ん……。うん……。」
今野は強引にあたしの顔を持ち上げ、キスをした。
涙の向こうに、まるで夢のような、綺麗で綺麗な現実を見た。



