本当は知ってたよ?
愛しいキミがずっと俺達の話を聞いてた事。
小刻みにキミは震えながら、
今にも消えてしまうんじゃないかというほどに泣いていたね・・・。
俺もその姿を見ていて泣きそうだった・・・。
抱きしめたくて・・・。
キスしたくて・・・。
なのに俺は自らの過去の行為のせいで
キミを自分の手で突き放したんだ・・・。
ごめんな・・・愛夢。
こういう時よく男って「他の奴と幸せになれ」とか言うけど
嘘でも俺はそんな事・・・言えねぇよ。
愛夢・・・好きだ。
愛夢・・・愛してる。
俺は愛夢にずっと隠してる事があった。
俺の過去には人の心を傷つけて・・・。
弄んでいた時があったんだ。
それは去年の事・・・。
俺が中1の時だった。
よく女をころころ変えて・・・。
遊んだり、泣かせたり・・・。
この女と今日は仲良く、明日は突き放し、明後日はまた・・・。
という最低な事をしていた。
俺のところにはよく女が群がってくる。
その中にはよく告白してくる奴がいた。
だけど俺は全てを冷たく拒否した。
「もう遊びとかじゃなくてちゃんとした彼女として見て?
私・・・青治が好きなの」
・・・ってよく言われたセリフ。
そして決まって返す俺の言葉は
「・・・ムリ!彼女としてじゃなかったら思う存分可愛がってやるけど?」
こうだった。俺・・・最低だった。
今になって心からそう思うよ・・・。
そして俺は今日の昼休み。
トイレから出て教室に行こうとした瞬間に1人の女に呼び止められたんだ・・・。
「ねぇ・・・青治」
冷たい声の主。
それは・・・
「愛羅(あいら)・・・」
その女は俺が中1の時に何度も軽い気持ちで体を重ね合わせてきた奴だ。
でも愛羅は違っていた。
そんなの気づいてた。
俺は遊び・・・。
でも愛羅は俺に何度かマジな告白をしてきていたんだ。
その度に俺は決まったあのセリフで断っていた。
どの女でもテキトーに遊んで必ず断ろうとはしていた。
でも愛羅は特にイヤだった。
何か裏表がありそうで・・・。
それが今になって・・・。
そう、まさに今になって分かった。
「友達から・・・聞いたよ?」
「何を?」
クスクス笑いながら言う愛羅。
「彼女・・・できたんだって?あの本命を作らないことで有名な青治に・・・」
「・・・だったら何?」
俺は冷たく言った。
「うわぁーこわーい。ダメだよー。
彼女青治が本気だと思い込んでるってー」
バカにしたように言う愛羅。
「俺・・・本気だけど?お前には関係ないだろ?」
思いっきり睨んでやった。
「ふーん・・・関係は確かにないよね?・・・今は・・・」
「何がしたいんだよ・・・」
「中1の頃の自分の行い・・・忘れたなんて・・・言わないよね?」
耳元で囁かれる。
「気持ちわりぃな!・・・くっつくな!!」
っとここ廊下だった。
みんなにじろじろと見られている。
「おい!場所変えんぞ!」
俺は普段あまり入らない音楽室へとやってきた。
「彼女に・・・隠してるんでしょ?」
「・・・それは・・・」
「ふふっほら・・・やーっぱりね・・・」
俺も・・・いつかは言おうと思っていた。
俺は中2になって変わった。
愛夢を見た瞬間に何故か・・・恋したんだ。
でも・・・今・・・言ってしまうと別れ・・・に繋がるかもしれない。
それが怖くて・・・怖くて・・・。
せっかく付き合えたんだ。
離れていってほしくないんだ・・・。
でも・・・それは無理みたいだ。
俺は涙が出てきた・・・。
怒りと自分の行いのへの複雑な気持ちで・・・
おかしくなりそうだ。
「今でも・・・青治が好きよ?」
不敵な笑みの彼女・・・。
企んでる事なんて言わなくても分かってしまう。
「・・・ふざけんなよ!!」
えっ!愛・・・夢?
今・・・そこにいたよな?
どうしよう・・・愛羅が何て言い出すか分かんねぇのに・・・。
「俺だっていうタイミング考えてんだよ・・・。
でも・・・今は・・・ダメなん・・・だ・・・頼む・・・言わないでくれ!」
もう終わりかな・・・俺達。
泣きながら俺は言った。
「・・・分かった。言わないであげる」
「・・・本・・・当か?」
俺は心からホッとした。
でもそんなの束の間だった。
愛羅は条件を出してきたんだ・・・。
その条件は「私と付き合いなさいよ!」だった。
この条件を破ると愛夢に全て話すと脅された。
それだけはダメだ・・・。
俺の口からじゃなきゃ・・・。
でももし本当に別れ・・・って事になったら・・・。
そう思うと切なくて・・・悲しくて・・・。
こっそり廊下の方を向くと愛夢は背を向けている。
こんな俺と複雑な恋してお前本当に・・・幸せになれる?
多分中1の頃の遊びまくってた女と会ってお前が
俺の彼女だってバレたら・・・。
いじめにあうに決まってる・・・。
だから・・・俺は決めたんだ・・・。
この恋を終わりにしよう・・・。
愛夢に嫌な男として見てもらおう。
だから・・・
「いいよ?付き合おう?」
笑顔ではっきりと言った。
愛夢に届くくらいの声で・・・。
ねぇ・・・君の方、もう俺、見れないよ・・・。
「恋人になってから1回目のキスしよう?」
愛羅の要求はどんどんエスカレートしてくる。
でも俺はキミをわざと傷つけた。
「え~?キス?まぁそんくらいならいいけど・・・」
俺は最低だ。
ごめんな・・・愛夢。
俺は愛羅とキスをした。
腰に手を回して・・・見せつけた。
でも俺は絶対に目を開けない。
だって俺は今、愛夢とキスしてるって思い込んでるんだ。
開けてしまったら・・・。
俺は知らずに涙していた。
涙の味・・・。
キスを終えて見たくない方を見てみる。
あぁやっぱり・・・。
愛夢は泣き崩れていた・・・。
愛夢・・・もう終わりだ。
俺はまた昔の・・・。
あの頃の自分に戻ってしまうんだろうか・・・。