「ねぇ、青治。ほんとに偶然じゃないって信じる?ねぇねぇ信じる?
超嬉しくない?」
「あぁもうしつけぇなぁ・・・分かったって・・・」
あの日から1週間くらい経った朝。
私は青治との誕生日が一緒だった事が嬉しすぎて
毎日のようにはしゃいで登校している。
それに青治はちょっぴり・・・いやかなり飽きてきているみたい・・・。
青治は違うの?
「なんでそんなウザそうな顔すんのさー・・・」
「だって毎日その話だぜ?飽きるっつーの・・・でもまぁ・・・」
「でもまぁ?・・・」
「確かに・・・うれし・・・いよな」
顔を赤く染めながらそう言った青治。
さっきよりも繋いでいる手の力を強めた。
その気持ちに応えるように私も手にぎゅっと力を入れる。
「青治・・・可愛い」
「うるせぇ・・・」
ねぇ神様・・・。
こんな幸せすぎる日々が続くと思ってたよ。
でも私達の恋は幸せからドロドロへと変わっていった。
それは今日の学校での突然過ぎる出来事。
夢では・・・なかったんだ。
「よーし!学校着いた」
「さて、あのイチャイチャカップル、未那と海牙のもとへ行くか!」
「うん!」
「・・・まっ、俺らもだけどな!」
そう言って頭をぐしゃっとして階段を駆け上がっていく青治。
ドキドキしながらその後を追いかける私。
「もう・・・はぁ・・・はぁ・・・青・・・治速・・・い」
「ん?あぁわりぃ」
全くもう・・・。
でもまぁその顔かっこいいからいいや!
「おっはよー海牙、未那!イチャイチャしてる?」
「おっはー青治。イチャついてんのはてめぇらだ!!」
「仲いいねぇ・・・キミ達は」
「ほんとにねぇ・・・」
私と未那でクスクス笑いながら言う。
ねぇ青治。ずっとさ、この4人でいる・・・って思ってた。
なのにどうして?
どうしてキミはこんなにも変わってしまったの?
いつも通りに時間が過ぎ去り昼休みになった時だった。
「青治ー。あれ?未那、青治はー?」
「えっ!さっきまで教室いたのに・・・」
「どこ行ったんだろうねぇ・・・海牙知ってる?」
「えっ!知らねぇよ?だって俺クラス違うし
今、この教室きたじゃん。俺来た時にはもういなかったぜ?」
「・・・だってよ?愛夢」
「そっか・・・もう1回探してみようっと・・・」
別にさ、用事はないんだ。
ただ一緒にいたくてさ・・・。
私は青治の行きそうな所を全て探した。
でも青治の姿はどこにもない。
音楽室には・・・いるわけないしね。
そう思い通り過ぎた時だった。
「ふざけんなよっ!!」
誰かの怒鳴る声。でもその「誰か」は私にとってすぐに分かってしまう人。
青治・・・の声。
「俺だって言うタイミング考えてんだよ・・・。
でも・・・今は・・・ダメなん・・・だ。頼む・・・言わないでくれ・・・」
涙混じりの声が聞こえてくる。
青治?泣いてるの?どうしたの?
誰と・・・話してるの?
「・・・分かった。言わないであげる」
えっ!女の・・・人?
「・・・本当・・・か?」
どういう事?
「ただし、条件がある。その条件に従ってもらわないと全部言うから!」
女の人がケラケラ笑っている。
何の話か分からないけど・・・。
青治を・・・脅してるみたいだ。
何があったの?青治。
「分かった・・・その条件・・・言えよ」
何故かその先を女の人に言って欲しくなかったんだ。
何か言ったらダメな気がして・・・。
イヤな予感がする・・・。
ダメ・・・。
言っちゃダメ!!
「私と付き合いなさいよ!知ってた?私ずっと青治が好きだったんだよ?
中1の時から・・・ずっと・・・」
イヤな予感が的中してしまった時、私の中で何かが壊れた気がした。
中1から?
ずっと?
青治が好きだった?
・・・でもまぁ・・・青治の彼女は私だし!!
返事はNOなのは分かってる!
「・・・いいよ?」
・・・えっ?
「付き合おう?」
ちょっ・・・待っ・・・。
青治・・・何言ってるの?
やめてよ・・・そんな冗談好きじゃないよ?
「そのかわり・・・愛夢に中1の時、俺がしてた事については言うんじゃねぇぞ?」
「青治が条件果たしてる限り言わないし!」
中1の時?
何かしたの?
しかも私に言うなって・・・どういう事?
もっ・・・訳分かんないから・・・。
青治・・・。青治・・・。こんなに好きで。こんなに愛しいのに・・・。
「じゃぁさ、恋人になってから1回目のキスしよ?」
イヤだ・・・イヤだ・・・。今何て言ったの?
その女の人の誘いを引き受けるの?青治。
青治・・・何も・・・言わないで!!お願い!
「え~?キス?まぁそんくらいならいいけど~」
ヤメてよ!!
涙が止まらない・・・。
キスが青治にとっては「そんくらい」のものなの?
違うよね?・・・今の返事は冗談だよね?
だって青治さ、私とキスする時、すごい顔赤くするじゃん・・・。
この時初めて知ったんだよ?
男の人でも緊張するんだなって・・・。
すっごい嬉しかったのに・・・。
見たくない・・・絶対に見たくなかった・・・。
だけど・・・私はこっそり中をのぞいてしまった。
・・・あぁもう。私の心はおしまいだ・・・。
私の恋はこんなにあっけなく幕を閉じてしまうの?
青治と女の人はキスをし合っていた。
そして青治は女の人の腰に手を回していた。
「ははっ!さすが青治!キスうまいねぇ」
「だろ?今度濃いのしてやるよ」
「えー?本当?」
「いつでもやってやる」
どう笑う青治は今までに見た事のないくらいの
チャラさで笑い方もどこか最低で・・・。
そして私はただただ・・・
涙していた・・・。