「志麻ちゃん、何回も言うけど、俺は山田だからね」
あれ、さっきまで走ってたのに全然息切れてない。すごーい。
歩人は1人独走状態だ。一応応援しとくか。
『歩人ーがんばれー。』
「志麻ちゃん、それ声小さすぎて歩人君に届いてなくない?」
『そうでもないよ』
「え、」
歩人はその間も快調に走って、快調にゴールテープを切った。
そのまま歩人は真っ先にこっちに向かってきた。
「志ー麻!優勝した!」
『うん、おめでと。』
「志麻が応援してくれたから頑張ったよ、」
『うん。ね、だから言ったでしょ?田中君。歩人にはあたしの声ちゃんと届いてるんだよ』
側で見ていた田中君は困ったような顔して、「山田だよ」と言った。
それを聞いてクスリと笑うあたしを見て、歩人は田中君に詰め寄っていた。
「おい!田中!今の何の話だよ!志麻のこと誘惑すんな!」
「してないよ、ただちょっと、ね。」
「おい!ただちょっとってなんだよ!」
楽しい体育祭だったな。

