『ねえ、歩人』



「ん?」



『もしあたしが死んだらどうする?』







青葉高校2年C組、窓際1番前の席、竹井 志麻(タケイ シマ)。同じくその隣、皆川 歩人(ミナガワ アルト)。彼氏彼女な関係です。






2限目、現代文、由良先生の授業中。






由良先生はあたし達が話してても注意しない。しても変わらないのがわかっているからだ。








「いきなりなんてことを。」



『別にいきなりじゃないよー。もしかしたら明日あたしは死んじゃうかもしれないじゃない?』



「それはそうだけど、」







生まれつき色素の薄い茶色の髪をくしゃりと触りながら困った顔をする歩人。






色素が薄いのは歩人のお母さんの影響が大きい。歩人のお母さんのカレンさんはオーストラリアと日本のハーフ。だから歩人はクオーターなのだ。






ちなみに歩人の名前の由来はカレンさんがアルトホルン奏者だからである。それから歩人は初対面の人には必ず“あゆと”と読まれて困っている。“あると”なのだ。







名前を間違えられた時も歩人は困った顔をするけど、今回はなんだかもっと険しい。