持っていた歩人の着替えを近くの棚にサッと置くと、くるりと向きをかえてお風呂場を後にする。
「おっと、ちょっと待ちなよ、志麻ちゃん」
後ろから伸びてきた腕に肘を掴まれてクイっと引き戻された。
『うおっとー、な、なんでしょうかー』
「そんなさっさと出てかなくてもいいじゃーん、」
『いやあ、あの、でもほら。まだお皿洗い終わってないから早く行かないとー、ねえ?だからこの腕はなしてくださらない?』
「ああ、大丈夫大丈夫、そんなの俺があとでやっとくからねー」
『いやいや、あたしがやるよー、ね?おっとなんでそんなせまってくるんですか』
にひり、と怪しい笑みを浮かべながら腰にタオル1枚しか纏っていない歩人が迫ってくる。
なんとなく嫌な予感がしたから後ずさった。さらにさらに近づいてあたしの行き場をなくす。後ろには洗面台。
とん、と洗面台に腰があたって、やばいと思って上を見上げると後ろの洗面台に手をついた歩人ののぎらついた目に囚われる。

