幸せの天秤

会社を出て、事務所に戻る。


__ギュッ__

事務所に着くなり、祐太くんに抱きしめられた。

彼はあたしの変化に気付いたのかもしれない。


曖昧な関係が、彼を傷つけてしまった。

彼があたしと距離を取る。


[俺、レンリさんが好きです。今なら、伝わってますよね]

祐太くんの気持ちにうすうす気付いていた。


あたしはいつでも自分に臆病だ。


まだ手話がわからなかった、あの日。

祐太くんは、手話であたしに「好き」だと言った。

あの時は本当に手話が分からなくて、何を意味しているのかなんて分からなかった。


今なら、ちゃんと彼が言ってることは分かっている。



[あたしは、、、、きっと祐太くんを傷つける。
祐太くんを幸せに、、、、出来ない]


祐太くんだけじゃない。

あたしはきっと、誰も幸せになんかできないかもしれない。

傷つけて、祐太くんが離れて行かれるのが、、、、怖い。

結局あたしはいつでも、自分が傷付くのが、、、、嫌なんだ。


[レンリさんに傷付けられるなら、それでもいい。
俺は幸せは、レンリさんの傍に居れることだから。


、、、俺なら、あんな顔絶対にさせない]


祐太くんが見たあたしは、どんな顔をしていたのだろう。


[あたしは、、、まだ]


[レンリさんが、あいつのことを好きなのはわかってる。
それでもいい。レンリさんが抱えてるものが少しでも楽になるなら
俺のこと、、、利用してよ]


彼はそう言うとまた、あたしを抱きしめた。

彼はどんな気持ちでそんなことを言ったのだろう。

あたしには分からない、、、。




あたしは彼の背中に手を回す。


あたしは彼の優しさに、、、、甘えてしまった。