次の日に部長に報告すると、
「建築家として生きて行くにはそれしか方法ないからな」と、
マリアと同じことを言われた。



今抱えている案件を終わらせなければ、
独立どころか、会社すら辞められない。


会社にはあおの関係がばれてから、前以上に女の子たちの反感を買ってしまった。

でも、後数日の辛抱と自分に言い聞かせ、働いた。



仕事をしていると時間が過ぎるのも早く感じさせられ、
あおとこうやって同じ場所で仕事をすることは
もうないんだと思ったら、無性に寂しくなった。





独立するといっても、あおと関わりが全くなくなるわけじゃない。


独立するのをきっかけに、部長の働きのおかげで
ここの会社とビジネスパートナーになった。

だから、ここの会社への出入りは自由。


マリアも部長と同じように仕事のパートナーになってくれた。


あたしはここから、また新しく始めるんだ。




独立してすぐは、あたしは手続きの作業に終われていた。

数ヵ月後、やっと落ち着き自分の仕事をこなしていた時、1人の男の子と出合った。


この出会いがあたしのこれからを変えてくれる
彼との出会いになるなんてこの時は思いもしなった。



彼が始め会社に来たときは依頼か何かだと思った。


でも、入って来ても、彼は一言も話さなかった。


「あの」

何度尋ねても、彼は部屋の中をキョロキョロするばかり。

そして数分が過ぎたとき、彼は鞄の中からメモ帳を取り出し、何かを書き出す。


[貴方が、レンリ アオヤマさんですか]

書き終わったメモを見せてくる。

あたしは「はい」と答える。


また彼は何かを書き出す。


[僕、レンリ アオヤマさんの所で勉強したいんです]

彼が何を言っているのか分からなかった。


あたしが困っていると、彼はあたしがデザインを手掛けた写真は見せる。


それは、あたしがアメリカで手掛けた作品たちで、懐かしい気持ちになる。


「あの、人を雇う余裕うちにはないですよ」

独立したばかりで、利益は出ているものの、
人を雇うような余裕がないのも事実。


[給料なんていらないんです。
ただ、建築家としてレンリ アオヤマさんの所で学びたいんです]


ただ、真っ直ぐにそういう彼にあたしは断ることが出来なった。