幸せの天秤

マリアからの電話で、少し機嫌が悪そうな部長。


「却下」


あたしが言う前から、断られる。


「あのあたし、まだ何も言ってないんですけど」

「どうせ、マリアからの電話なんてロクなことがない」


そう言い切る、部長。


「来週の金曜日。デザインのコンクールで審査員として
参加して欲しいと協会の人から問い合わせが来たそうなんですけど」

あたしは気にせず、話を進める。


「俺の話は聞いてないかったのか、却下だ」


「別に仕事しに行くわけじゃないんですけど」


あたしも簡単には引き下がらない。


「参加はさせない」

部長も意見を変えようとはしない。

「何でですか」


「審査委員になれば、お前が携わるものは出せなくなる」


「あたし、コンクールには参加しませんよ。てか、一度最優秀賞を貰ったら
その後出品できないじゃないですか」

あたしはそんなことも知らないの、と言う口調で言うと
部長はため息をついた。


「それぐらい、俺だってわかってるよ。お前が参加者の作品を見たいって気持ちもな。
でも、うちの部署からは桐谷と青山が参加する。
そのフォローに、お前も入って欲しいと考えてるから、
お前が関わる以上、審査員としての参加もNGだ、わかったか」



勝手に決めないで欲しい。

あたしの口を尖らせていると、「頼んだぞ」と上司の権限を使われる。


そう言われれば、これ以上は何も言えない。