幸せの天秤

何も覚えていないあたしの為に毎日のようにお見舞いに来てくれた、マリア。

東条さんだって自分の仕事で忙しいのに。

勝手に居なくなったのに探してくれた、卓真。

あんな酷いことしたのに「やり直そう」と言ってくれた、あお。


なのに、あたしは素直に言えない。

思い出しているなんて、、、絶対に言えないよ。


「伊藤さん、最近いろんな賞総なめにしてますよね」

あおが東条さんに聞く。

「あぁ。最近のあいつは良い作品を書くと思うよ。けど、あいつの人間性は嫌いだ」

「そうなんっすか」

2人の会話に胸が痛む。

「その作品はあたしのなんだよ」なんて、言いたいけど言えない。


「竜崎に連絡したか?」

「え?」

東条さんに言われてハッとする。

「まだ」

「竜崎もお前のこと心配してるから、連絡くらい入れとけ」

忘れてた、、。


「後で、連絡しておきます」

「青山、レンリのこと送って行け。後は俺がやっとくから」

そう言われ、あたしはあおと車に戻る。

数時間前まではあおと居れることに喜んでたのに、息が詰まりそう。

そんなこと、、、言えない。

あおとやり直すって決めたんだから。

でも、これじゃ本当にあたしはなんであおと別れたのかわからない。

あおの幸せを願って離れた。

なのに、今またあおの傍にいる、、、。