幸せの天秤

「何があった」

先生は椅子に座る。

「なんで?」

「あんなに嬉しそうに外出していったのに、そんなことを言うってことは何かあったんだろう」

変なところは鋭いんだから。


「、、、知らなかったことが見えてきた」

知りたくなかったことも、、、。


「そう」

「あたし、バツイチだった」

「そう」

先生は相槌を返すばかり。


「兄弟もいて、親が離婚した後、会ったことないと思ってた父親に会ってみたい」

「兄弟いたこと、知らなかったのか?」

「うん。一人っ子だと思ってたし。18くらいの記憶はたぶんあると思う。
でも、18年間あたしに兄弟がいたって記憶はないから、それ以降に知った話なんだと思う」

「でも、彼らは君に兄弟がいたことは知らない」

先生はマリア達からも、あたしのことを聞いているのだろう。


「あたし、隠してたのかな」

「東条さんや竜崎さんならともかく、
マリアさんが知らないってことはここ最近の話なんじゃないかな?」

ここ最近の話と言われても、あたしにとっては全部が最近の話に感じる。


自分の人生なのに、誰かに作られたようにしか思えない。

あおと結婚したことも、離婚していたことも、あたしが有名な建築家だったことも。


全部、嘘みたい。