幸せの天秤

その日から、毎日のようにマリアはお見舞いに来る。

当たり障りのない、会話。

だけど、少しずつマリアのことがわかってきた。

マリアは凄い建築家だと言うこと、東条さんとあたしはマリアに取って、仕事のパートナーだったこと。

けど、マリアから聞く話はあまりに現実味がなくて、
本当にあたしはマリアや東条さんと肩を並べて仕事をしていたのだろうか。

マリアがデザインした物件を見て、凄いとは思った。


でも、デザインを書き方さえわからないあたしがどうやって書いていたのか、
さっぱりイメージさえ出来ない。



今日もマリアはいつものようにあたしの病室に来る。

「ヤッホー」(英語)

相変わらず、ハイテンションで今日もいろんな書類を抱えている。

「仕事忙しいの?」(英語)

「日本の仕事は大分片付いたんだけど、あっちの仕事が溜まっちゃってね」(英語)


マリアに見たいな凄い建築家が暇な訳ない。

それなのに、毎日、毎日あたしの所にやって来る。

何も思い出せない、、、あたしの所に。

それが、なんだかもとても申し訳ない。


「ゴメンね、何も思い出せなくて」(英語)

「な、何言ってるのよ。あたし、飲み物買って来るね」(英語)

マリアは病室を出て行く。

また、傷つけてしまった。

きっと、またどこかで泣いている。

前に一度、マリアの後を追った時、マリアは待合い室で泣いていた。

あたしの前で泣かないように、マリアは気を使っているのだろう。