幸せの天秤

「レンリちゃん、盗作事件のこと嘘でしょ。むしろ、東条のところに取られたって感じ?
東条のところで賞を取った作品を見て思ったよ。レンリちゃんの作品だってね」

彼は何処まで、知っているのだろうか。

やけに詳しい、、、。


「もう過ぎた話ですから」

「まぁ、僕にとっては良い話だったけどね」

「どういうことですか」

「そのままの意味。レンリちゃん、僕好みだし」

彼はあたしの顎を掴み、唇を指でなぞる。


「東条に取られるのは、嫌だからな」

「東条さんと知り合いなんですか?」


さっきから、「東条、東条」と彼は東条さんのことをやけに気にする。


「あぁ。ムカつくくらい知ってるよ。僕が欲しいもの全部持ってるからな」

「僻みですか」


彼はあたしの言葉が気に入らなかったのか、掴んでいた手を離すと、あたしの頬を殴った。


遠慮もなく殴られたせいでその場に蹲る。

今まで感じたことのない痛みに、激痛が走る。


「僕に逆らわない方が良いよ。レンリちゃん怪我しちゃうから」

あたしの目の前に来て、嘘くさい笑顔でまた笑う。


人を初めて、怖いと思った。

男の力がこんなにも、強いなんて思いもしなかった。


「そうそう、携帯出して」

彼はあたしの目の前に手を出す。

あたしはさっきのこともあり、彼に素直に差し出す。


「バキッ」

再びあたしの手の中に戻ってきた携帯は、画面が割れていて、電源すら入らない。


「逃げられちゃ、困るからね」

サラッとそんなことを言うもんだから、あたしの頭は付いていかない。