ここで書く手紙は幾つかあった。



亡くなったお母さんへの手紙(書き置き)とあの方への手紙くらいだった。



今では、メールという便利なものを使うのが普通だが、私は違った。



手紙は自分の字で書くからこそ意味がある、と私は思う。



それに、その字からぬくもりを感じることもある。



友達と連絡する時は、勿論、メールを使う。



でも、ほとんど私は手紙を書く。



ブー、ブー



マナーモードにしていた携帯が震え出す。



鞄から取り出し慌てて耳にあてる。





「もしもし?」



「蝶凛? 今、何処にいるの?
この前、言ってたお店紹介しようと思ってるんだけど。」





親友の侑子からだ。



侑子は新しいお店を探しては、私に紹介していつも楽しませてくれている親友だ。



それにしても、今日は突然だな、と思った。





「いつも通り、『Dream of ROSE』にいるよ。」



「了解。
すぐ、そっちに向かうから待ってて。」





「はいはい。」と、あっさりした返事をし、電話を切った。



侑子、近くを通りかかってたのかな?



侑子とお店を周る約束をするのは、大体夕食の後だったのに。



何かあったのかな?





「友達?」



「はい。
親友がこっちに来るみたいで。」



「友達が多いと楽しいからね。」





店長の様子が少し変わった。



あれ……。



空気が少し暗くなったような……。



気のせい、かな?



――気のせいじゃなかった。



侑子との通話が終了した後、私と店長の会話は続かなくなった。