空の願い














「ここで大丈夫。」




家の近くまで送ってもらった彼にそう言う。




私の場合、初対面の人にここまでしてもらうのには気が引ける。



彼には十分、酔い覚めを手伝ってもらったから。


これ以上、迷惑はかけられない。








「だめ。すぐそこだからって油断してたら襲われちゃうよ?」



「いや、ホントにすぐそこ.......」





まっすぐ歩いて3mなんですって。



襲われるも何もありませんから。







「はいはい、行くよ。」




グイッと腕を引かれる。





痛い、痛いです。


もう少し優しく扱ってもらえないでしょうか。



これでも女の子なんで、私。


ジャパニーズレディーなんで。


私の場合、繊細なガラスでできてるんで。








そんな心の声が届くはずもなく、彼はどんどん進んでいく。








「あの.......家、過ぎました。」



とっくに家を通り越してしまった彼は、私の言葉にピタリと足を止める。







「そこのアパートだから。」



「...........ホントにすぐそこだ。」





マヌケ面でそう言って、来た道を引き返す。







「なんかごめん.....もう少し先にあるかと思って。」




申し訳なさそうに頭を掻く坂本君。



そんな容姿とは正反対な可愛らしい一面に、笑いそうになってしまう。