――なあんて、今日はやけに優しい私。
だって、ゆたの協力を得ないことには、私の計画はうまく行かないんだもの。
「今日の仕事中、二階に用事があって下りたんだけどね」
おもしろそうなテレビ番組がないと悟った私は、電源をオフにして、音楽を聴くことにする。
少しでも雰囲気を明るくしようと、元気のよい洋楽のポップスをチョイスした。
「やっぱ……松原くん、大塚って人のこと、好きみたいだ」
こないだは、強く言いすぎたから、今日はしおらしく、いじらしい女の子作戦だ。
「えっ?もしかして苑美ちゃん、松原さんに直接確かめたの?」
目を丸くしたゆたは、本気で驚いているのがわかる。
誰でも驚く話かもしれないけれど、ゆたはやっぱり単純過ぎるんだ。
顔にもストレートに感情が出るからわかりやすいってば。
笑いたいのをぐっと堪え、私は話を続けた。
「ううん……。
給湯室の横を通る時にさ、偶然あの二人が話してる姿を見かけたのよ。
松原くん、楽しそうな笑顔でさ、『璃音ちゃんはかわいい』って言ってた」
こう見えても、一応高校では演劇部の私。
……マネージャーだけどね。
でも近くで見て来たから、少しくらいは演技できてるはず。
迫真の演技とまでは行かないけど、悲しそうな顔くらいなら作ることできるわ。


