《♪♪♪♪♪♪♪》

「ん?」

着メロに気付き携帯を開くと、お姫様からのメール


《着いた、ケンチどこ?》

《O|O|の入口》

《わかった》

淡々としたメールのやりとりをしてケンチはタバコを吸いながら目の前を行き交う人達を眺める。

休日の賑わいの中、ケンチの前にユウは現れた。

人込みの中、ケンチを見付けたユウの顔は45分も遅刻したとは思えないくらいの笑顔で笑ってケンチに手を振った。

「ったく、お姫様は遅刻した自覚あんのかね〜?」

くしゃくしゃに顔を緩ませて、子犬の様に嬉しそうに近付いてくるユウを見てケンチもまた、嬉しそうに溜め息をつく。


ケンチとユウは手を繋ぐと二人並んで歩き始めた。

「これからドコ行こっか?」

「ん〜、ブラブラする?」

「え〜〜!決めてないの?!」

「映画でも観ようと想ってたけど・・誰かさんが45分も遅れてくるからさぁ、映画始まっちゃってるんだよねぇ〜」

チラリとユウを見る。悪戯な視線を送るケンチに、頬をプゥ〜ッと膨らませスネるユウ。5歳も年上に思えないユウの仕草・・・・けれど、年下のケンチにはユウが可愛くて堪らなかった。
ドジな所も、そそっかしい所も・・・スネた顔も・・・すぐ泣く所も全部が可愛くて大好きだった。
ケンチはユウの膨らんだ頬を押さえると中の空気を押し出した。すると、ユウの口元はタコみたいになって、嫌がるユウが唸り声を出す。

「うう〜〜、うぅぅ〜〜〜!むぅ〜〜〜!!」

またアタフタするユウの姿も大好きだった。
「ははは!ユウ不っ細工ぅ〜〜〜アハハッ」
必死にケンチの大きな手を、口元から引きはがすとユウはケンチの手をパチンッと叩いて言った。

「失礼だろう〜、そんなにブスじゃないし!」

またスネる。クスクス笑ってケンチは強くユウの手を握りしめた。
「痛い痛い痛い!」

またケンチはユウを見て笑った。

二人は、じゃれあいながらブラブラと歩き続ける。ずっと手を繋いだまま。
騒がしい人込みに紛れて行く。