「なんでケンチは怒らないの?」

「ん?」

パスタ屋に入り注文を終えた時、ふいにユウが問い掛けた。

「なにを?」

ライターでタバコに火を着けながら聞き返す。

「ワタシが遅刻してきた時ケンチ怒らないよね・・・・」

コップに注がれた冷水を一口飲んで続けた。
「いっつも怒らないよね?ワタシなら怒りまくりだけど、ケンチは一回も怒らないから・・・」

タバコを深く吸い込み、一気に吐き出すとケンチは笑顔で答えた。

「だって俺、それくらい気にしないし。遅刻は俺にとっては怒る事の対象外」

「・・・ふうん・・」
また冷水を口に含む。まだ何か言いたげなユウにケンチが聞く。

「・・なんで急に聞くの?」

「・・・前から思ってたんだけど・・・ケンチって全然怒らないなぁ〜と思って」

「怒るよ俺だって、ウソつかれたりしたらね・・・けど、遅刻ぐらいじゃハラ立たねぇし」

「・・・ふぅん」

調度話しに一区切りついたその時、二人のテーブルへ料理が運ばれてきた。
二人はアツアツのパスタを、フォークにクルクル巻き付けて頬張り始める。互いの皿を交換したりしながら楽しい夕食を味わう。



<・・・・・ホントは一度、思いっきり喧嘩してみたいんだよねケンチと・・・そうすれば今以上に仲良くなれる気がするから。・・・・・・でも、喧嘩して、それで別れちゃうかもしれないし・・・やっぱり、今のままが1番なのかな?>

大好きなカルボナーラをクルクルしながら、ユウはそんな事を考えていた。

ケンチはユウの考えている事なんて、まったくもって露知らず・・・美味しそうに大盛り魚貝パスタを堪能中である。
ケンチの、そんな姿を見ていると、ユウはやっぱり幸せだなぁ・・・と感じる。


<・・・それにしても一週間も彼氏と話してないなんて、サエちゃん頑固だなぁ・・・>


ふと友人サエの事を思い出す、幸せいっぱいなユウだった。


「美味しいね♪」