その手を天高く伸ばせば

意地悪な目付きでユウを見下ろす。

「でも!5時間くらいは一緒に居られるし・・・・・」

語尾が消え気味になってゆく。

「ま、仕方ないか・・・ユウは仕事あったし俺は学校だったし」

「うん」

「今日は何食べたい?」

「スパゲッティー!!!」

「んじゃパスタの店後で探すか」

「うんっ」

しっかりと二人の手は握られたまま週末の雑踏に紛れて行った。









2時間後、待ちに待っていた映画の続編を見終わり、興奮冷めやらぬユウを連れて、ケンチがやってきたのは最近出来たばかりのレストランビル・・・8階建てのビル全て料理店と言う、今注目を集めている建て物だ。


「さ、入って店決めよ」

「うん」

ケンチに買ってもらった映画のパンフレットを握りしめ、ケンチの後を着いて行く。



ぐるぐるビル内を回り、いろいろメニューを見比べて、1番気に入ったパスタ屋へと向かう。
少し、夕食には遅い時間帯のせいか、二人を乗せたエレベーターには他に誰も居なかった。
目指す8階まであと4階・・・・
ぼーっとしているユウに、不意打ちでケンチがキスをした。

「!!!・・・」

突然の事に驚きはしたが、二人だけの空間だったので、ユウも受け入れた。
ユウの胸は少しドキドキしている。
ケンチはまだ若いからか、意外と人前でも平気でキスをする・・・。
それは、5歳年上のユウにとっては、恥ずかしくて少し困ってしまう。・・・けれど、人前でキスしてくれる事で、ケンチが自分を彼女だと回りの人達に堂々と自慢してくれているようで、何だか嬉しさも感じるのだ。
だからケンチの不意打ちなキスも拒まず受け入れる事が出来る。



ユウは少し頬を赤くして俯きながら黙ってケンチの傍に立つ。



静かにエレベーターが止まり、扉が開く。


ケンチはまた、黙ってユウの手を取り歩き出した。そしてユウも。