その手を天高く伸ばせば

「きぃ〜〜〜!さっさとデートへお行きっ!」

サエに思いっきりお尻を叩かれたその勢いのまま、ユウはロッカールームを出て行った。
「本当羨ましい事・・・」

サエが呟いた。









《15分位遅れる!》

「仕方ねぇな〜」

《いつものゲーセンに居るから》

《分かった》





30分後、遅刻姫の到着。


<やっば・・また30分遅刻しちゃったよ・・・あ〜〜あ>

とは思うものの、急ぐ気配はなく普通に歩いてゲーセンに向かう。



ゲーセンの入り口に到着してそのまま中へと進んだユウは、目の前のUFOキャッチャーと格闘しているケンチを発見し、小走りに近寄る。
そして、何食わぬ顔でケンチの腕を掴み目があったケンチにとろけた笑顔を見せると、UFOキャッチャーを覗き見る。

「うわ!遅刻魔が来たっ!!!」

わざとらしくケンチが驚いて見せた。

「・・・だって、サエちゃんと話ししてたら電車乗り遅れたんだもん・・・」

なぜかスネるユウの頭を撫でながら、ケンチが優しく微笑む。

「・・・ホント遅刻姫だなぁユウは。そうだ、ホラ・・これ上げる」

へんてこりんな見知らぬキャラクターのヌイグルミを手渡された。
「え〜〜〜、要らない・・」

「誰かさんがぁ・・15分て言ったのに、30分も遅れて来るからさぁ・・ついついゲームやっちゃって、こんなワケ分かんねぇキャラのヌイグルミ捕っちまったんだろぉ〜〜」
少しだけ嫌みっぽくケンチが言った。
・・・そう言われると欲しくもないが、手渡されたヌイグルミをケンチに返すワケにもいかず、ユウは不服そうではあったが、よく分からないキャラクターのヌイグルミをバッグに押し込んだ。

「じゃ、映画館に行こっか!ユウが見たがってた映画、やってるから」

30分も遅刻して来たユウを怒る様子もなく、ユウの手を強く握り、ケンチは歩き始める。
さりげなく握られた手に体も引っ張られてユウもフラフラと歩き出す。

「今日は映画見て・・・メシ食って・・・ぐらいだな」

「うん、夕方からだもんねワタシ遅れたし・・・」

「そうそう、30分も遅刻するからデートの時間も減っちゃうもんなぁ〜」

チラリ・・・、