その手を天高く伸ばせば

「お疲れ様ですっ」

「お疲れ〜」

ロッカールームで私服に着替えようと、ユウは勢いよくロッカーの戸を開けた。

「ユウお疲れぇ」

遅れてユウと同期のサエがロッカールームに入って来た。

「お疲れサエちゃん」

バッグから鏡を取り出して、軽く化粧を直しながらチラチラ腕時計を覗く。その様子を見ていたサエが話し掛けてきた。

「・・ユウ、アンタ何か急いでる?」

「うん、まあね用事があるから」

ニッコリ笑うユウに対してサエが、からかい気味に言った。

「なになにデート???」

少し恥ずかしそうに、ユウがまた笑った。

「まあ・・・エヘヘッ」

「このこのぉ〜!ホント仲良いよねぇアンタ達は〜〜」

軽くユウの頬を引っ張りながらサエが言う。そしてサエにされるがまま頬を摘(つま)まれながらユウは笑って言った。

「え〜〜?そうかなぁ??えへへ・・」

「ホント、5歳年下の彼氏と仲が良くて羨まし・・・」

軽くユウの頬を抓(つね)って手を放すと溜め息一つ・・・・

「ふぅ〜〜〜・・・」
「?元気ないね・・サエちゃん、どしたの溜め息なんかついて〜?」

暗い表情のサエに今度はユウが、頬を抓り返す。
すると、サエもされるがままに頬を抓られたままで、溜め息混じりに語り出す。

「・・先週さぁ、彼氏とケンカして以来連絡取ってないんだよねぇ〜・・・はぁ〜〜〜・・・・」

「え!!先週ってもう一週間も!?」

黙って頷くサエ。

「彼からメールも電話もナイの?」

「アイツ意外と頑固だから・・・」

「じゃ、サエちゃんから電話すればイイじゃんっ」

「!?なんでアタシから連絡しなきゃいけないのよ!!!悪いのはアッチなんだから、向こうから連絡してくるべきよっ!!!ふんっ」

鼻息荒くサエがユウに詰め寄る。
ゴンッと、ロッカーに頭をぶつけながらも興奮するサエを宥(なだ)める。

「あぁ〜、そうだよね!ごめんごめんっ」

<なんでワタシが謝らないといけないの?!サエちゃんも頑固なんだから・・>

「はぁ〜・・本当アンタ達みたいにケンカもしないで長続きする秘訣・・教えてもらいたいもんだわ・・・」

「お互い無理せず、包み隠さずに何でも話し合う事かな?なんてね?」