男性達は太田家から500メートル程下流の明景 安太郎(みよけ やすたろう、当時40歳)の家に集まり、善後策を話し合った。

ヒグマ討伐やマユの遺体奪回は翌日にせざるを得ないが、とり急ぎ役場と警察、そして幹雄の実家である蓮見家への連絡を取らなければならない。

しかし、通信手段は誰かが直に出向くより他になかった。

一度はある男性が使者役に選ばれたものの。

「い、嫌だ!誰がそんなヒグマさウロつく外になんか一人で出るもんか!」

酷く嫌がって要領を得ない。

代わりに斉藤 石五郎(さいとう いしごろう、当時42歳)が引き受ける事になった。

太田家よりも更に上流に家を構える石五郎は、所用にて当主・安太郎が外出しなければならない明景家に妊娠中の妻・タケ(たけ、当時34歳)、三男・巌(いわお、当時6歳)、四男・春義(しゅんぎ、当時3歳)の家族3人を避難させ、オドも男手として同泊する手筈が取られた。

それが後々、悲劇に繋がるとも知らずに…。