鉄砲を持った5人が何とか銃口を向けるが。

「な、何でじゃ!」

「弾が!弾が出ん!」

手入れが行き届いていなかった為、発砲できたのはたった1丁だけだった。

怒り狂うヒグマに捜索隊は散り散りとなったが、呆気なくヒグマが逃走に転じた為、彼らに被害はなかった。

改めて周囲を捜索した彼らは、トドマツの根元に小枝が重ねられ、血に染まった雪の一画がある事に気付いた。

慎重に小枝をどかせる。

その下にあったのは、黒い足袋を履き、ぶどう色の脚絆が絡まる膝下の脚と、頭蓋の一部しか残されていないマユの遺体だった…。